J2リーグ第21節ホーム戦。ファジアーノ岡山 VS 鹿児島ユナイテッドFC

はーーーーー。
もう、何度目のため息だろうか。

「こんなことってあるんだなあ……」

その一言に尽きる、この日のCスタホーム戦。
きっと居合わせた人はみんな、毎回通う人も、初めて観戦した人も、久しぶりに来てみた人も、ここに集った観客が全員そう思ったに違いない、そんな奇跡に満ちた結末であった。

西日本豪雨の被害があってから、ちょうど一年がたつ。

もう一年、だけどまだ一年。
いまだに7000人を超える方たちが、仮設住宅で避難生活を余儀なくされている。
地元山陽新聞の一面見出しは「平穏な日々、まだ遠く」。
スタジアムの大型ビジョンで当時のニュース映像が流され、改めて大変な災害、甚大な被害だったことが思い起こされる。

この日、クラブは「our wish ～岡山の星に復興の願いを～」と銘打って、岡山の星空をデザインしたユニフォームシャツを来場者にプレゼント。復興に向けて、想いをひとつに。

試合前には選手たちによる募金活動も行われて、Cスタ前では椎名選手のよく通る声が響き渡り、皆が足を止めて募金をしていた。
また、試合開始直前のスタジアムでは、西日本豪雨で亡くなった方、今年の九州豪雨で亡くなった方への黙祷も行われた。
ファジサポからは「きばれ鹿児島！！」という弾幕も。

それにしても。この人の多さはいつもと違うぞ？
メインから大型ビジョンの下を通ってバックスタンドに続く通路、上から見ていてまったく人の途切れることがない。

夏の花火大会のときの河川敷って、まさにあんな感じじゃないか。
開始30分前も10分前も、直前になってもまったく同じだ。
それもそのはず、すでにもうバックスタンドの奥まで赤で染まっている。ゲート10に続く階段は大渋滞。

あー、もうたぶん行っても座れないから、芝生のほうにいったほうがいいよと教えてあげたい。
しかしその芝生ですら、いつしか隙間のないぐらいに埋まっていたのだった。

さて試合のほうは、前半に椋原選手やイヨンジェ選手の惜しいシュートもあったが、お互いに無得点のまま後半へ。
しかし57分、ほんの一瞬のスキをつかれた鹿児島の素早いリスタートから、あっという間にボールをゴールまで運ばれてしまった。
鹿児島先制。ううむ。

だが、選手はもちろん、サポーターもあきらめない。
1万5千人超の応援と手拍子は、だんだん大きくなる。
ボール奪取したときの歓声、外したときのため息、いつもの倍近い声がスタジアムに響く。

後半74分、久保田選手に代わって上田康太選手。
拍手が一段とすごい。上田くんが入ってくるだけで、空気が変わる。
みんな、上田くんのこと好きすぎ（笑）
うん、待ってた。待ってたよ！

そして、今日の入場者数が発表された。

「15,731人」

おおおーーーっ、とスタジアムがどよめく。
すごい、やった！

一万人超えのChallenge1、そしてさらにそれを上回るキャパいっぱいの……あれっ、これって2016年の群馬戦に匹敵するぐらい？
ちなみに、プレーオフ進出を決めた群馬戦は15,204人。今回はそれを抜いて、歴代入場者数3位ということになる。
まさに赤い色が、スタジアムを埋め尽くしているのだ。

もう時間がない、けれど徐々に押し込み始めるファジアーノ。
86分、仲間選手が倒されて、ゴール正面からのフリーキック獲得。
喜山選手から、壁になっている選手たちに

「もうちょっと右。あ、そっちはもっと左」

のような手振りの指示が入る。
実は、このシーンが作戦ぽくてめっちゃ好き。
いつかのアウェイ戦の、素晴らしいフリーキックが頭をよぎる。
後ろのほうで、エンブレムに手を当てているのは椋原選手か。

そして。
上田選手のキックは、ジャンプした壁の上を大きく巻きながら飛んで、ゴールの左隅に吸い込まれていった。
なんという美しいゴール……。
サポーターの大歓声。そこここでハイタッチ！
（DAZNのベストゴールに選ばれました！）

初めて来たらしい幼稚園ぐらいの男の子、最初「下手やなー」とかつぶやいていたけど（笑）、ゴールの瞬間怒涛のようにハイタッチしてやったよ、ふふふ。またおいでよ。

スタジアムのボルテージは、ますます上がる。
バックスタンドのチャントと、メインスタンドの拍手がひとつになり、うねりとなってスタジアムを包み込む。
あー、今なんかこの「岡山」がひとつになっている感じ、すごい。

89分には、廣木選手からゴール前のイヨンジェ選手→ヘディングを受けた中野選手が、トラップする間に倒されPKを獲得。

こんな最高のお膳立て。回るタオル。
誰もが星に祈っただろう瞬間、中野選手のシュートがゴールキーパーの手を弾いてゴールネットを揺らした……勝った。

なんだか、呆然としてしまった。
こんな最高の終わり方ってある？

ファジアーノのここ数年の課題が、終了間際に同点に追いつかれたり、中には逆転されたりという試合で、データで言うと……
うーん、もうそんなんどうでもええわ。
嬉しい……こんなん泣くやろ。
劇的勝利に慣れてないんだからさ……（鼻をかむ）。

これからまた、苦しい闘いは続いていくのだろうけれど、
本当に勝ちたかった日に、ちゃんと勝てた。
また、次の宿題についてひとつずつ考えていけばいいよ。

本当にありがとう。
星に願いが届くといいな。